2014,11,19, Wednesday
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第3章、第4章の内容は次です。
第3章 将来が読めない我が社の存続と発展をM&Aに託す
・創業者と後継者の売却額への思い
・売却益で第2創業の資金を作る
・M&A売却による第2創業の考え方
・幹部社員が謀反を起こす
・株式承継には多額の資金が必要
・暫定的に社長のイスを承継する「仮免」後継社長
・「仮免」社長から「実質」社長に移行する事業承継計画
・分散した自社株式が事業承継を難儀にする
・社員の質に左右される売却の可否
・中小企業は同業者への売却に道がある
第4章 零細企業後継者の私がM&Aを成功させた秘訣
・M&A相談の天国と地獄
・私が歩んだM&A売却の手順
・仲介アドバイザー抜きで中小企業のM&Aは成功しない
・中小企業経営者が仲介アドバイザーを必要とする理由
・優良企業だからこそ必要なアドバイザリー契約
・中小零細企業だった我社の売価算出法
・M&Aは秘密保持を前提に進められる
・買収メリットのシナリオ作りがポイント
・基本合意契約まではお見合いのハシゴはOK
・経営者の人格と企業理念が問われる買収監査
・社員の動揺を土下座で鎮める
・M&A「できる経営者」「ひるむ経営者」
・起業家を後継者に迎え継がせる不幸を回避する
・サンタクロースがM&Aに乗ってやってくる
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「サンタクロースがM&Aに乗ってやってきた」に関する講演も承っております。


第3章、第4章の内容は次です。
第3章 将来が読めない我が社の存続と発展をM&Aに託す
・創業者と後継者の売却額への思い
・売却益で第2創業の資金を作る
・M&A売却による第2創業の考え方
・幹部社員が謀反を起こす
・株式承継には多額の資金が必要
・暫定的に社長のイスを承継する「仮免」後継社長
・「仮免」社長から「実質」社長に移行する事業承継計画
・分散した自社株式が事業承継を難儀にする
・社員の質に左右される売却の可否
・中小企業は同業者への売却に道がある
第4章 零細企業後継者の私がM&Aを成功させた秘訣
・M&A相談の天国と地獄
・私が歩んだM&A売却の手順
・仲介アドバイザー抜きで中小企業のM&Aは成功しない
・中小企業経営者が仲介アドバイザーを必要とする理由
・優良企業だからこそ必要なアドバイザリー契約
・中小零細企業だった我社の売価算出法
・M&Aは秘密保持を前提に進められる
・買収メリットのシナリオ作りがポイント
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・経営者の人格と企業理念が問われる買収監査
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同族わが社の事業承継構造を振り返る |
同族わが社の事業承継構造を振り返る |
2014,11,19, Wednesday
二〇〇七年五月一四日に改正消費生活用製品安全法が施行されました。事業者は「製品欠陥の有無に関わらず、重大事故の発声を知った日から起算して十日以内に監督官庁に報告することが義務づけられています。
企業のイメージダウン等から、意図的に隠した場合は制裁が待ち受けています。意図的に経営者が隠そうとしても、いつかは社員の口から内部告発が起こり、企業ダメージが更にダウンすることが想定されます。
機械・設備の整備点検が義務づけられている企業は、全従業員に点検義務を浸透させているかも重要なポイントとなります。私が売却した会社において、工場作業員が業務用大型乾燥機に腕を巻き込まれ瀕死の重傷を負う事故がありました。
従業員の不手際から起きた事故でしたが完治まで数年かかる重症でした。救急車の出動から、労働基準監督署、警察に自動的に連絡が行き、現場検証後、機械の入替や整備点検指導等、私も徹底的に追及を受け精神的にも労力的にも、そして機械整備、点検義務の浸透の為の資金力にも悩まされたことがあったのです。
過去のことになりますが、二〇〇七年という年は、企業の不祥事が連日新聞紙面を賑わせていました。高級料亭の品質不正表示、老舗和菓子メーカーの製造日改ざん、食肉製造会社の産地偽装、介護事業者による介護報酬の不正表示、出勤簿改ざんによるサービス残業の強制等々・・、このときから現在まで、全国すべての不正報道を調査したならば、本書数十頁の記載に及ぶのではないでしょうか。
あらやる業界、業種の企業が摘発されました。その全てが内部告発に端を発していると言っても過言ではありません。破綻に至ったケースも多数ありました。破綻を免れた企業でもトップ交代を余儀なくさせられています。同族中小企業で、同族以外の人物にトップが交替するということは、経営者一族の生計の源を剥奪されるということです。
内部告発される企業の大半は成熟期の企業です。発展期の企業では社員に士気があり、社長以下社員が一丸となって目標に向かって進んでいきます。しかし、成熟期に入ると多くの社員が「自分の役割」や「求められ成果」がわからなくなってしまい、経営陣だけが旨みを得ていると判断してしまい、内部告発というお土産を持って退社していくのです。
お土産の持参先は監督官庁やマスコミです。旧来は一社員の密告をマスコミが鵜呑みにして取り扱うことはなかったのですが、時代は変りました。マスコミ各社は内部告発の話題を歓迎し、弱い立場の中小企業の社員に成り代わり、経営者の不正を正す行動に出てくるのです。
私にも内部告発と似たような苦い体験がありました。私の過去には、様々な起業体験がありますが、そのひとつに社会福祉法人の設立がありました。この法人は様々な施設を設立拡大し順調に経営が進んでいました。しかし、規模が大きくなっていくにつれ、役員間の内部分裂が始まり、役員間の批判が内部告発という形に発展し、怪文書も流れ、私自身にも火の粉が降りかかってきました。法人設立から十三年目の成熟期のときです。この紛争は地元紙でも取り上げられる始末です。
当事者は私ではなく言いがかり的な中傷でしたが、この内部紛争に巻き込まれてしまい、このときも精神的にはかなり参ってしまいました。この中傷が私の本業へも影響することを危惧しましたが、法人の理事をいち早く辞任することでこの紛争から抜け出ることができました。自分と相手の見解の違いで内部告発は思わぬところから発生します。十分な注意と対策が必要です。
資金力と経営体力の弱い中小企業において、不祥事が勃発してからの対応ではすでに手遅れです。業種や企業規模に関わらず、社員からの内部告発など受けぬよう、法令尊守を意識して守ることの徹底が、企業内にどれだけ浸透しているかが企業の存続と発展の鍵を握っています。
法令順守を徹底するには様々な整備が求められ、多額の資金を必要とします。その資金が捻出できず経営を続けていくと、ある時思わぬところから不祥事が発覚し、優良企業があっという間に破綻していく時代です。
団塊世代経営者が創業(又は事業承継)した数十年前の経営価値観や環境は、現代と比較すると大きな変化があります。この変化を肌で感じ、その対応策を早めに実行することが求められます。
後継者不在企業の優良企業においても、いつなんどき、予測できない不祥事や事態が勃発するかわかりませんので、M&Aを事業承継の手段とするならば、早めのM&A決断が必要です。M&Aの決断がおくれてしまいますと、手遅れになってしまうことが多いのも現実です。
二〇一一年三月に起きた東日本大震災の影響で、M&A売却予定の会社が被災し、売却中断を余儀なくさせられた事例もありました。被災地に限らず、風評被害で売り上げが急減しM&A売却が中断した事例もありました。
二〇〇七年におきた企業の不祥事を前述しましたがこの年に限らず社会やビジネス環境の変化で、現在に至るまで多くの不祥事や予測できないビジネスの変化に見舞われ、優良企業と言われていた企業があっというまに淘汰されてしまっている現実が多数見受けられます。
事例をあげてみましょう。
労働法や就業に関する法令は従業員にとって優位になり、長時間労働によるサービス残業や労働災害隠しを従業員に強制すると、ブラック企業として汚名をきせられ、その現実をマスコミが一斉に報道し、その企業は追いつめられていきます。
「パワーハラスメント」という言葉があります。同じ職場で働く者に対して、上司が部下に精神的、身体的苦痛を与えると「パワーハラスメント」として経営者が監督官庁に訴えられます。「パワーハラスメントは」、二〇一二年一月に厚生労働省がその定義を定めています。
団塊世代経営者が数十年前に創業し、会社を軌道に乗せるための一手法であった、社員への根性論や精神論を基にしたリーダーシップは、過去のようなやり方で社員に接してしまうと、「パワーハラスメント」として訴えられてしまいます。
企業のイメージダウン等から、意図的に隠した場合は制裁が待ち受けています。意図的に経営者が隠そうとしても、いつかは社員の口から内部告発が起こり、企業ダメージが更にダウンすることが想定されます。
機械・設備の整備点検が義務づけられている企業は、全従業員に点検義務を浸透させているかも重要なポイントとなります。私が売却した会社において、工場作業員が業務用大型乾燥機に腕を巻き込まれ瀕死の重傷を負う事故がありました。
従業員の不手際から起きた事故でしたが完治まで数年かかる重症でした。救急車の出動から、労働基準監督署、警察に自動的に連絡が行き、現場検証後、機械の入替や整備点検指導等、私も徹底的に追及を受け精神的にも労力的にも、そして機械整備、点検義務の浸透の為の資金力にも悩まされたことがあったのです。
過去のことになりますが、二〇〇七年という年は、企業の不祥事が連日新聞紙面を賑わせていました。高級料亭の品質不正表示、老舗和菓子メーカーの製造日改ざん、食肉製造会社の産地偽装、介護事業者による介護報酬の不正表示、出勤簿改ざんによるサービス残業の強制等々・・、このときから現在まで、全国すべての不正報道を調査したならば、本書数十頁の記載に及ぶのではないでしょうか。
あらやる業界、業種の企業が摘発されました。その全てが内部告発に端を発していると言っても過言ではありません。破綻に至ったケースも多数ありました。破綻を免れた企業でもトップ交代を余儀なくさせられています。同族中小企業で、同族以外の人物にトップが交替するということは、経営者一族の生計の源を剥奪されるということです。
内部告発される企業の大半は成熟期の企業です。発展期の企業では社員に士気があり、社長以下社員が一丸となって目標に向かって進んでいきます。しかし、成熟期に入ると多くの社員が「自分の役割」や「求められ成果」がわからなくなってしまい、経営陣だけが旨みを得ていると判断してしまい、内部告発というお土産を持って退社していくのです。
お土産の持参先は監督官庁やマスコミです。旧来は一社員の密告をマスコミが鵜呑みにして取り扱うことはなかったのですが、時代は変りました。マスコミ各社は内部告発の話題を歓迎し、弱い立場の中小企業の社員に成り代わり、経営者の不正を正す行動に出てくるのです。
私にも内部告発と似たような苦い体験がありました。私の過去には、様々な起業体験がありますが、そのひとつに社会福祉法人の設立がありました。この法人は様々な施設を設立拡大し順調に経営が進んでいました。しかし、規模が大きくなっていくにつれ、役員間の内部分裂が始まり、役員間の批判が内部告発という形に発展し、怪文書も流れ、私自身にも火の粉が降りかかってきました。法人設立から十三年目の成熟期のときです。この紛争は地元紙でも取り上げられる始末です。
当事者は私ではなく言いがかり的な中傷でしたが、この内部紛争に巻き込まれてしまい、このときも精神的にはかなり参ってしまいました。この中傷が私の本業へも影響することを危惧しましたが、法人の理事をいち早く辞任することでこの紛争から抜け出ることができました。自分と相手の見解の違いで内部告発は思わぬところから発生します。十分な注意と対策が必要です。
資金力と経営体力の弱い中小企業において、不祥事が勃発してからの対応ではすでに手遅れです。業種や企業規模に関わらず、社員からの内部告発など受けぬよう、法令尊守を意識して守ることの徹底が、企業内にどれだけ浸透しているかが企業の存続と発展の鍵を握っています。
法令順守を徹底するには様々な整備が求められ、多額の資金を必要とします。その資金が捻出できず経営を続けていくと、ある時思わぬところから不祥事が発覚し、優良企業があっという間に破綻していく時代です。
団塊世代経営者が創業(又は事業承継)した数十年前の経営価値観や環境は、現代と比較すると大きな変化があります。この変化を肌で感じ、その対応策を早めに実行することが求められます。
後継者不在企業の優良企業においても、いつなんどき、予測できない不祥事や事態が勃発するかわかりませんので、M&Aを事業承継の手段とするならば、早めのM&A決断が必要です。M&Aの決断がおくれてしまいますと、手遅れになってしまうことが多いのも現実です。
二〇一一年三月に起きた東日本大震災の影響で、M&A売却予定の会社が被災し、売却中断を余儀なくさせられた事例もありました。被災地に限らず、風評被害で売り上げが急減しM&A売却が中断した事例もありました。
二〇〇七年におきた企業の不祥事を前述しましたがこの年に限らず社会やビジネス環境の変化で、現在に至るまで多くの不祥事や予測できないビジネスの変化に見舞われ、優良企業と言われていた企業があっというまに淘汰されてしまっている現実が多数見受けられます。
事例をあげてみましょう。
労働法や就業に関する法令は従業員にとって優位になり、長時間労働によるサービス残業や労働災害隠しを従業員に強制すると、ブラック企業として汚名をきせられ、その現実をマスコミが一斉に報道し、その企業は追いつめられていきます。
「パワーハラスメント」という言葉があります。同じ職場で働く者に対して、上司が部下に精神的、身体的苦痛を与えると「パワーハラスメント」として経営者が監督官庁に訴えられます。「パワーハラスメントは」、二〇一二年一月に厚生労働省がその定義を定めています。
団塊世代経営者が数十年前に創業し、会社を軌道に乗せるための一手法であった、社員への根性論や精神論を基にしたリーダーシップは、過去のようなやり方で社員に接してしまうと、「パワーハラスメント」として訴えられてしまいます。
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同族わが社の事業承継構造を振り返る |
同族わが社の事業承継構造を振り返る |
2014,11,18, Tuesday
時代の変化と共に経営力として求められる能力も多岐に及んでいます。内部告発への対応もそのひとつです。
自分の勤務する会社で不正が生じた事実を誰かが外部に公表する密告のことです。あらゆる業界において、談合体質が連日報道されている昨今です。次から次と談合による不正が摘発され、談合防止のためあらゆる防止対策が構築されてくるようになりました。
公正取引委員会は談合排除対策として自主申告を求めています。密告をしたならば自主申告順位に応じて、談合の処罰を行わない、という次のような密告を奨励する通達内容です。
① 一番目の密告者には課徴金免除
② 二番目の密告者には課徴金50%減額
③ 三番目の密告者には課徴金30%減額
三番目の密告者まで、その罪を免除、或いは減額するという自主申告奨励の通達(司法取引)ですが、密告の奨励以外にも、誰が入札に参加しているのかわからなくするため、指名競争入札の廃止や、入札会場ではなくそれぞれの会社内から入札を行う電子入札の制度等々、あの手この手で談合を阻止しようとしています。
自主申告には経営者の迷いがあるでしょうが、自主申告をためらっているうちに、自社の社員が公正取引委員会に自社の「談合」を密告したとしたらどうなるでしょうか。終身雇用制度が崩壊し、企業は社員の終身雇用を保証しない時代になりました。企業が終身雇用を保証せず、リストラも横行するということであれば、社員も企業に対し忠誠心をもたなくなっているということです。
以前の中小企業では、会社の体質や経営陣に問題があったとしても、反論せずに忠誠心を装っていれば、社員はその企業で生き残ることができました。
お前はクビだ!
と社長に言われることを恐れ、忠誠心を装っていた社員ですが、
いまどきの社員は、
お前は首だ!と経営者に言われると、
首にするなら、不正を訴えるよ・・・!
といわんばかりに、経営者を脅しながら自ら退職していきます。おとなしかった猫が、虎に豹変するのです。前述のような談合を行っている業界や会社において、会社に不平不満を持ち、虎に豹変しながら退職した社員は、内部告発という行動に出る場合があるので、経営者にとっても穏やかではありません。
談合にかかわらず、新聞紙上では多くの不正行為が報じられています。その報道の源となっているのが、社員からの内部告発です。
不正というものではなくとも、中小企業には多少なり様々な垢があります。特に同族中小企業のワンマン経営者にはこの垢が多いものです。
同族中小企業では、先代経営者から事業を承継した後継者は、先代経営者の残した垢を一掃しようとします。しかし、いざ、自分が会社の垢を一掃し、健全企業に立て直そうと意欲を持ったときに、一掃できない現実を知る後継者が多いのも事実です。
後継者の知る現実とは、会社の垢を一掃するために必要な人材力と組織力不足、社員の意欲を取り戻すための賃金体系改定の困難さ、その他職場環境整備や、機械・家屋等の整備に要する資金力不足等々、極めつきは、思うように銀行融資が得られない自社の経営体力の弱さを痛感し、業界の将来と自社の存続の限界を悟るのです。
このような現実を認識させられ、手をこまねいているうちに、自社の社員の密告ではなくとも、談合の分け前の少ない他の業者が一番目の密告者で無罪放免となり、異業種に業態転換していったならば、密告された企業は生き残りができるのでしょうか。
中小企業は金融機関からの借入依存の強い経営体質です。自社社員の内部告発、他社の内部告発は現実味のある問題として経営者はふまえておかなければなりません。
自社が社内の不祥事で摘発されたならば、課徴金の資金調達、入札不参加期間の売り上げ減、不正企業のイメージダウンによる売り上げ減、銀行融資のストップ等々窮地に追い込まれます。そのとき存続は可能でしょうか。
資金力と経営体力のある大手企業は課徴金などに臆することもなく、相変らず談合を続けるケースも見受けられますが、体力の弱い中小企業は破綻まで追い込まれることも覚悟する必要があります。
談合の発覚で、経営者が自殺に追い込まれた建設業界の実例も、私の身近に実存します。内部告発は建設業界だけの問題ではありません。ひとたび不祥事が勃発すると、堰をきったように次々と社員から経営上の問題指摘が湧き上がり、会社の存続の可否までに発展してしまいます。
自分の勤務する会社で不正が生じた事実を誰かが外部に公表する密告のことです。あらゆる業界において、談合体質が連日報道されている昨今です。次から次と談合による不正が摘発され、談合防止のためあらゆる防止対策が構築されてくるようになりました。
公正取引委員会は談合排除対策として自主申告を求めています。密告をしたならば自主申告順位に応じて、談合の処罰を行わない、という次のような密告を奨励する通達内容です。
① 一番目の密告者には課徴金免除
② 二番目の密告者には課徴金50%減額
③ 三番目の密告者には課徴金30%減額
三番目の密告者まで、その罪を免除、或いは減額するという自主申告奨励の通達(司法取引)ですが、密告の奨励以外にも、誰が入札に参加しているのかわからなくするため、指名競争入札の廃止や、入札会場ではなくそれぞれの会社内から入札を行う電子入札の制度等々、あの手この手で談合を阻止しようとしています。
自主申告には経営者の迷いがあるでしょうが、自主申告をためらっているうちに、自社の社員が公正取引委員会に自社の「談合」を密告したとしたらどうなるでしょうか。終身雇用制度が崩壊し、企業は社員の終身雇用を保証しない時代になりました。企業が終身雇用を保証せず、リストラも横行するということであれば、社員も企業に対し忠誠心をもたなくなっているということです。
以前の中小企業では、会社の体質や経営陣に問題があったとしても、反論せずに忠誠心を装っていれば、社員はその企業で生き残ることができました。
お前はクビだ!
と社長に言われることを恐れ、忠誠心を装っていた社員ですが、
いまどきの社員は、
お前は首だ!と経営者に言われると、
首にするなら、不正を訴えるよ・・・!
といわんばかりに、経営者を脅しながら自ら退職していきます。おとなしかった猫が、虎に豹変するのです。前述のような談合を行っている業界や会社において、会社に不平不満を持ち、虎に豹変しながら退職した社員は、内部告発という行動に出る場合があるので、経営者にとっても穏やかではありません。
談合にかかわらず、新聞紙上では多くの不正行為が報じられています。その報道の源となっているのが、社員からの内部告発です。
不正というものではなくとも、中小企業には多少なり様々な垢があります。特に同族中小企業のワンマン経営者にはこの垢が多いものです。
同族中小企業では、先代経営者から事業を承継した後継者は、先代経営者の残した垢を一掃しようとします。しかし、いざ、自分が会社の垢を一掃し、健全企業に立て直そうと意欲を持ったときに、一掃できない現実を知る後継者が多いのも事実です。
後継者の知る現実とは、会社の垢を一掃するために必要な人材力と組織力不足、社員の意欲を取り戻すための賃金体系改定の困難さ、その他職場環境整備や、機械・家屋等の整備に要する資金力不足等々、極めつきは、思うように銀行融資が得られない自社の経営体力の弱さを痛感し、業界の将来と自社の存続の限界を悟るのです。
このような現実を認識させられ、手をこまねいているうちに、自社の社員の密告ではなくとも、談合の分け前の少ない他の業者が一番目の密告者で無罪放免となり、異業種に業態転換していったならば、密告された企業は生き残りができるのでしょうか。
中小企業は金融機関からの借入依存の強い経営体質です。自社社員の内部告発、他社の内部告発は現実味のある問題として経営者はふまえておかなければなりません。
自社が社内の不祥事で摘発されたならば、課徴金の資金調達、入札不参加期間の売り上げ減、不正企業のイメージダウンによる売り上げ減、銀行融資のストップ等々窮地に追い込まれます。そのとき存続は可能でしょうか。
資金力と経営体力のある大手企業は課徴金などに臆することもなく、相変らず談合を続けるケースも見受けられますが、体力の弱い中小企業は破綻まで追い込まれることも覚悟する必要があります。
談合の発覚で、経営者が自殺に追い込まれた建設業界の実例も、私の身近に実存します。内部告発は建設業界だけの問題ではありません。ひとたび不祥事が勃発すると、堰をきったように次々と社員から経営上の問題指摘が湧き上がり、会社の存続の可否までに発展してしまいます。
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同族わが社の事業承継構造を振り返る |
同族わが社の事業承継構造を振り返る |
2014,11,17, Monday
同族中小企業の事業承継には、表面化している問題以外に、表面化していない構造的な問題が潜んでいます。
表面化している問題は、各アドバイザーの力を借りれば解決するのですが、創業者と後継者のしがらみ等は封印され表面にでてきませんので、第三者にはなかなか理解できないものなのです。その理由は同族中小企業のオーナーの強さです。経営支配権を持つ現経営者の絶大的な権力の存在です。
同族中小企業の事業承継の一番の問題点は、後継者が事業承継に乗り気でも、現経営者が本気にならなければ承継に至らないということです。現経営者自身が、事業承継対策に関心を示さず、関心を示したとしても事業承継計画に取り組む姿勢がないのであれば、後継者や事業承継アドバイザーがどのような忠告をしようが、現経営者に通じることはありません。
同族中小企業における事業承継の後継者育成や事業承継計画策定が遅れ、その対策が後手に回ると、場合によっては、後継者のポストを意に添わぬ人に奪われたり、争族が長引き終極企業破綻に至ってしまうということもありえるのです。後継者が決定したならば、経営支配権を持つ別会社を第二創業することを私は提唱します。
しかし、安易な考えでの起業は禁物です。別会社を立ち上げるには「後継者は本当は何がやりたいのか」を真剣にとらえなければなりません。現経営者が築いてきた事業が、後継者に向いているとは限りません。世の中の動向を見据え、自分が経営者として意欲の持てる事業は何かを、真剣に何度も自問自答すべきなのです。自分の仕事のたな卸しで天職を再考してみてください。
自分自身の天職を再考したとき、事業承継する企業(事業)が天職ではないと悟る後継者もいるはずです。承継することをためらいながらも口に出せず毎日のルーチンワークに追われている後継者もいるかもしれません。後継者が承継をためらっているならば、第三者への事業引継ぎも検討しなければなりません。M&A売却です。
しかし、後継者自身で承継する事業(現職)が天職と再認識でき、自分の進むべき道が明確になったならば、その事業計画書を基に、金融機関から後継者自身の力で、別会社に融資を受け、第2創業を実践させる気概が重要です。
現経営者ではなく、後継者自身が金融機関から借入を行い経営に至るという、究極の銀行交渉術育成と後継者実践教育です。
どのような企業でも、後継者の経営手腕と事業承継手腕がなければ企業の存続と発展は不可能です。しかし、危殆に瀕してからの事業資金の借り入れとは違い、この時点で融資が却下されたとしても、後継者の事業計画のどこに問題があるのかが後継者自身明確になり、再チャレンジも容易になるはずです。
単一事業の危険性や事業承継の問題点が理解できれば、遅かれ早かれ、現経営者の事業とは別の事業が必要と考えるようになるはずです。
後継者が別会社創業に意欲を持てるようであれば、金融機関から融資を受けるための事業計画と、事業承継計画を後継者自らが立案し、さらに融資交渉も自ら行い、独り立ちしなければなりません。
銀行交渉術は同族中小企業経営者の必須項目です。融資を自ら引き出せない後継者は、後継者のポストも「遅かれ・早かれ」剥奪されてしまう厳しい経営環境の現代社会です。後継者が実践する別会社の設立は、現経営者から事業承継した会社が余裕のあるうちに実践できる、理想の後継者教育となるはずです。
後継者が経営支配権を持つ別会社の設立は、後継者教育の為だけではありません。後継者が現経営者から暫定的に事業を承継したとしても、経営支配権や事業用資産の承継が円滑に進むとは限らないのです。
現経営者と後継者間にしかわからない、同族中小企業のオブラートに包まれた事業承継に係わる根深い問題はどの企業にも存在します。事業承継を控えた各企業のオブラートに包まれた問題は表面化していないものですが、同族中小企業の事業承継構造を察する上でないがしろにできないものです。
オブラートを溶かすのは容易ではありません。ゆえに、事業承継が円滑に進まない場合を想定した別会社の創業で経営権を持った経営者となり、さらに、先代経営者から事業承継した会社の後継者となる。二股の経営を私は提唱するのです。
別会社が軌道に乗れば、先代経営者から承継した会社が将来、争族他何らかのトラブルに巻き込まれても、会社分割や事業再編、さらにはM&Aの早期決断等々、後継者が別会社を受け皿として対応できることになります。後継者の経営する別会社の存在は、様々な事業承継と、企業存続と発展のためのスキームをタイムリーに打てることに結びつくことになります。
現経営者の築いた事業にしがみつくだけでなく、後継者の別会社による第二創業で、再生を必要とした時のあらゆる選択視が見えてきます。これからの事業承継手法のひとつとして、別会社で後継者が経営支配権を持つことにも関心を示してみてください。
「二兎を追うもの一兎も得ず」の諺は先代後継者が好んで使う表現です。しかし、これからの後継者には、新事業の起業力と二の矢、三の矢の企画を次々に打ち出し軌道に乗せる第二創業の企画力と経営力が求められています。
表面化している問題は、各アドバイザーの力を借りれば解決するのですが、創業者と後継者のしがらみ等は封印され表面にでてきませんので、第三者にはなかなか理解できないものなのです。その理由は同族中小企業のオーナーの強さです。経営支配権を持つ現経営者の絶大的な権力の存在です。
同族中小企業の事業承継の一番の問題点は、後継者が事業承継に乗り気でも、現経営者が本気にならなければ承継に至らないということです。現経営者自身が、事業承継対策に関心を示さず、関心を示したとしても事業承継計画に取り組む姿勢がないのであれば、後継者や事業承継アドバイザーがどのような忠告をしようが、現経営者に通じることはありません。
同族中小企業における事業承継の後継者育成や事業承継計画策定が遅れ、その対策が後手に回ると、場合によっては、後継者のポストを意に添わぬ人に奪われたり、争族が長引き終極企業破綻に至ってしまうということもありえるのです。後継者が決定したならば、経営支配権を持つ別会社を第二創業することを私は提唱します。
しかし、安易な考えでの起業は禁物です。別会社を立ち上げるには「後継者は本当は何がやりたいのか」を真剣にとらえなければなりません。現経営者が築いてきた事業が、後継者に向いているとは限りません。世の中の動向を見据え、自分が経営者として意欲の持てる事業は何かを、真剣に何度も自問自答すべきなのです。自分の仕事のたな卸しで天職を再考してみてください。
自分自身の天職を再考したとき、事業承継する企業(事業)が天職ではないと悟る後継者もいるはずです。承継することをためらいながらも口に出せず毎日のルーチンワークに追われている後継者もいるかもしれません。後継者が承継をためらっているならば、第三者への事業引継ぎも検討しなければなりません。M&A売却です。
しかし、後継者自身で承継する事業(現職)が天職と再認識でき、自分の進むべき道が明確になったならば、その事業計画書を基に、金融機関から後継者自身の力で、別会社に融資を受け、第2創業を実践させる気概が重要です。
現経営者ではなく、後継者自身が金融機関から借入を行い経営に至るという、究極の銀行交渉術育成と後継者実践教育です。
どのような企業でも、後継者の経営手腕と事業承継手腕がなければ企業の存続と発展は不可能です。しかし、危殆に瀕してからの事業資金の借り入れとは違い、この時点で融資が却下されたとしても、後継者の事業計画のどこに問題があるのかが後継者自身明確になり、再チャレンジも容易になるはずです。
単一事業の危険性や事業承継の問題点が理解できれば、遅かれ早かれ、現経営者の事業とは別の事業が必要と考えるようになるはずです。
後継者が別会社創業に意欲を持てるようであれば、金融機関から融資を受けるための事業計画と、事業承継計画を後継者自らが立案し、さらに融資交渉も自ら行い、独り立ちしなければなりません。
銀行交渉術は同族中小企業経営者の必須項目です。融資を自ら引き出せない後継者は、後継者のポストも「遅かれ・早かれ」剥奪されてしまう厳しい経営環境の現代社会です。後継者が実践する別会社の設立は、現経営者から事業承継した会社が余裕のあるうちに実践できる、理想の後継者教育となるはずです。
後継者が経営支配権を持つ別会社の設立は、後継者教育の為だけではありません。後継者が現経営者から暫定的に事業を承継したとしても、経営支配権や事業用資産の承継が円滑に進むとは限らないのです。
現経営者と後継者間にしかわからない、同族中小企業のオブラートに包まれた事業承継に係わる根深い問題はどの企業にも存在します。事業承継を控えた各企業のオブラートに包まれた問題は表面化していないものですが、同族中小企業の事業承継構造を察する上でないがしろにできないものです。
オブラートを溶かすのは容易ではありません。ゆえに、事業承継が円滑に進まない場合を想定した別会社の創業で経営権を持った経営者となり、さらに、先代経営者から事業承継した会社の後継者となる。二股の経営を私は提唱するのです。
別会社が軌道に乗れば、先代経営者から承継した会社が将来、争族他何らかのトラブルに巻き込まれても、会社分割や事業再編、さらにはM&Aの早期決断等々、後継者が別会社を受け皿として対応できることになります。後継者の経営する別会社の存在は、様々な事業承継と、企業存続と発展のためのスキームをタイムリーに打てることに結びつくことになります。
現経営者の築いた事業にしがみつくだけでなく、後継者の別会社による第二創業で、再生を必要とした時のあらゆる選択視が見えてきます。これからの事業承継手法のひとつとして、別会社で後継者が経営支配権を持つことにも関心を示してみてください。
「二兎を追うもの一兎も得ず」の諺は先代後継者が好んで使う表現です。しかし、これからの後継者には、新事業の起業力と二の矢、三の矢の企画を次々に打ち出し軌道に乗せる第二創業の企画力と経営力が求められています。
| 管理者 | 07:44 | comments (x) | trackback (x) | 2章
同族わが社の事業承継構造を振り返る |
同族わが社の事業承継構造を振り返る |
2014,11,14, Friday
企業の生々流転を考えたとき。企業が成熟期を迎え、次の打ち手のタイミングが遅れ衰退期に入る兆しが表れたならば三社一体の再生が必要です。
三社とは「会社」「社員」「社長」の三社を指します。三社一体の再生のひとつの手段にM&Aがあります。
しかし、M&A売却が可能なケースは、ほんのひと握りです。それは、自社が限りなく債務超過になってからM&A売却を決断するからです。
M&A売却を決断したものの、M&A売却は可能性がなく、民事再生や、自己破産の決断を要する事業再生であったというケースが多いのです。金融機関が債務超過に陥った企業への借入債権放棄の話題やら、債務超過に陥った企業の買収の話題やら、企業経営者にとって、自社が窮状に陥っても救済策があるという、はなはだ勘違いの慢心感から、問題の先送りで再建のタイミングを逃し、終極、座して死を待っているケースも目立ちます。
金融機関の債権放棄や、債務超過でも再生のスポンサーが現れたり、M&Aで買収しようとする企業が現れるというケースは、「ほとんど」のケースが大手上場企業が対象のようです。「ほとんど」ではなく「すべて」と置き換えてもよいかもしれません。
中小企業が債務超過に陥りM&Aを決断しても、買い手は現れません。万が一現れたとしても、債務が一掃されるだけの資金調達にしかなりません。借入金が一掃されても、経営者自身(先代及び後継者)の売却後の収入の道は閉ざされてしまいます。
M&Aを含む事業再生においては、「再生後」における経営者の身の振り方について言及されることはありませんが、「再生」という観点でとらえた場合、それでよいのでしょうか。事業再生とは、「会社」が存続発展し、「社員」の就業が継続され、「社長」(先代経営者・後継者)の身の振り方もメドがつく、といった、「会社」・「社員」・「社長」の「三社」一体の再生が可能となってこそ、事業再生が成功といえるものと私は思っています。
自社が傾いていることも知らないで、自社売却の成功予測を語る由々しき経営者も存在します。決算書を見て資産超過でいたつもりが、簿価(帳簿の価格)を実勢価格に修正した場合、債務超過というケースの経営者です。
金融機関に対し、思い通りに債権放棄を要求できない中小企業の事業再生では、手の打ちようがなくなる前に、金融機関と結んだ約定返済条件を変更する「リスケジュール」等の銀行交渉術や、債務が過大になった場合の筋の通った対処法など、自社が危殆に瀕する予兆を見せたときの再生知識を、経営者自身が身につけ、タイムリーに必要な手を自ら講じ、破綻を防止しなければなりません。
タイムリーに打つ次の手の一つにM&A売却があります。賢い経営者は自社を破綻から守るため早い時期にM&A売却の決断をします。
中小企業のM&A売却では、売却側経営者のハッピーリタイアのケースが多いのですが、後継者の決断するM&A売却は、次の新事業で生計を立て直すゆるぎない覚悟と、第ニ創業への意欲が必要です。M&Aで売却してしまうと「競業避止」という契約条項があり、売却した会社の業界では転職も起業もできません。売却した同業種での就業と再起業は不可能になり、後継者にとっては異業種への転換だけが進む道となってしまうのです。
先代経営者からの単一事業の承継だけでは必ず衰退していきます。その衰退の時期には、再生力と新しい事業力の合体した第二創業への起業力が必ず必要となります。しかし、第二創業の重要性を認識している後継者でも、後継者自身が経営支配権を持ち、別会社を新たに第二創業するケースは、ごく、少数ではないでしょうか。先代経営者が経営支配権を持つ会社の延長線で、多角化を検討するケースが多いものです。
広い意味で事業承継をとらえれば、第二創業も再生の一手段と私は考えています。その第二創業を、先代経営者が経営支配権を持つ同族中小企業の延長下で行うか、別会社で行うかという選択を考えてもらいたいのです。
私は別会社での第二創業を後継者に提案しています。先代経営者から社長のポストを譲られる前の早い時期から、別会社を第二創業することを提案していますが、遅くとも、後継者が先代経営者から社長のポストを暫定承継したならば、後継者は別会社を創業し、別会社で本物社長を目指す心構えが必要です。
三社とは「会社」「社員」「社長」の三社を指します。三社一体の再生のひとつの手段にM&Aがあります。
しかし、M&A売却が可能なケースは、ほんのひと握りです。それは、自社が限りなく債務超過になってからM&A売却を決断するからです。
M&A売却を決断したものの、M&A売却は可能性がなく、民事再生や、自己破産の決断を要する事業再生であったというケースが多いのです。金融機関が債務超過に陥った企業への借入債権放棄の話題やら、債務超過に陥った企業の買収の話題やら、企業経営者にとって、自社が窮状に陥っても救済策があるという、はなはだ勘違いの慢心感から、問題の先送りで再建のタイミングを逃し、終極、座して死を待っているケースも目立ちます。
金融機関の債権放棄や、債務超過でも再生のスポンサーが現れたり、M&Aで買収しようとする企業が現れるというケースは、「ほとんど」のケースが大手上場企業が対象のようです。「ほとんど」ではなく「すべて」と置き換えてもよいかもしれません。
中小企業が債務超過に陥りM&Aを決断しても、買い手は現れません。万が一現れたとしても、債務が一掃されるだけの資金調達にしかなりません。借入金が一掃されても、経営者自身(先代及び後継者)の売却後の収入の道は閉ざされてしまいます。
M&Aを含む事業再生においては、「再生後」における経営者の身の振り方について言及されることはありませんが、「再生」という観点でとらえた場合、それでよいのでしょうか。事業再生とは、「会社」が存続発展し、「社員」の就業が継続され、「社長」(先代経営者・後継者)の身の振り方もメドがつく、といった、「会社」・「社員」・「社長」の「三社」一体の再生が可能となってこそ、事業再生が成功といえるものと私は思っています。
自社が傾いていることも知らないで、自社売却の成功予測を語る由々しき経営者も存在します。決算書を見て資産超過でいたつもりが、簿価(帳簿の価格)を実勢価格に修正した場合、債務超過というケースの経営者です。
金融機関に対し、思い通りに債権放棄を要求できない中小企業の事業再生では、手の打ちようがなくなる前に、金融機関と結んだ約定返済条件を変更する「リスケジュール」等の銀行交渉術や、債務が過大になった場合の筋の通った対処法など、自社が危殆に瀕する予兆を見せたときの再生知識を、経営者自身が身につけ、タイムリーに必要な手を自ら講じ、破綻を防止しなければなりません。
タイムリーに打つ次の手の一つにM&A売却があります。賢い経営者は自社を破綻から守るため早い時期にM&A売却の決断をします。
中小企業のM&A売却では、売却側経営者のハッピーリタイアのケースが多いのですが、後継者の決断するM&A売却は、次の新事業で生計を立て直すゆるぎない覚悟と、第ニ創業への意欲が必要です。M&Aで売却してしまうと「競業避止」という契約条項があり、売却した会社の業界では転職も起業もできません。売却した同業種での就業と再起業は不可能になり、後継者にとっては異業種への転換だけが進む道となってしまうのです。
先代経営者からの単一事業の承継だけでは必ず衰退していきます。その衰退の時期には、再生力と新しい事業力の合体した第二創業への起業力が必ず必要となります。しかし、第二創業の重要性を認識している後継者でも、後継者自身が経営支配権を持ち、別会社を新たに第二創業するケースは、ごく、少数ではないでしょうか。先代経営者が経営支配権を持つ会社の延長線で、多角化を検討するケースが多いものです。
広い意味で事業承継をとらえれば、第二創業も再生の一手段と私は考えています。その第二創業を、先代経営者が経営支配権を持つ同族中小企業の延長下で行うか、別会社で行うかという選択を考えてもらいたいのです。
私は別会社での第二創業を後継者に提案しています。先代経営者から社長のポストを譲られる前の早い時期から、別会社を第二創業することを提案していますが、遅くとも、後継者が先代経営者から社長のポストを暫定承継したならば、後継者は別会社を創業し、別会社で本物社長を目指す心構えが必要です。
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